新型コロナウィルスの感染拡大防止策として、全国に一斉休校の要請が出されてから早2か月が過ぎました。
全国の高校生がこれまでの努力の成果を出す場であったインターハイは史上初の中止に。
世の中が猛スピードで動き、混沌とする中で部活にも変化が求められています。
何を目指し、今後どう変わっていくのか?
部活の「挑戦」と生み出される効果に迫りました。
目次
【挑戦】「リアル」再開までの建設的空間を目指して
【序章】晴天の霹靂の全国一斉休校
【混乱】同居する「情熱」と「同調圧力」
【変革】いちはやくサイバー空間へ
最後に
【挑戦】「リアル」再開までの建設的空間を目指して
部員同士、お互いの顔が見えることで「自分には所属する場所がある」という安心感が得られる。
「集まれなくても出来ること」を探す創造的な思考が育つ。
「これが上手く稼働しない」「ならばこう変えてみよう」と、問題点を解決する力が付く。
新型コロナウィルスの感染拡大により集まって活動することが許されない今、世の中ではオンラインでの活動が主流になりつつあります。
部活でも、ZOOMなどのアプリを使ってウェブ上でのミーティングを定期的に行うことに始まり、部員主体のトレーニングメニュー作りや、トレーニングの動画を共有して自分達のフォーム、成果の分析をして指導を仰ぐなど、様々な活動が取り入れられるようになりました。
今後はこれに加え、選手同士の励ましの言葉や、練習メニューについての議論が記録出来るコミュニティサイトなども一層強化されていくことでしょう。
進学を考える選手達にも、質問のやり取りができたり、トレーニング動画を送ってアピールできる仕組みなどが検討されるかもしれません。
試行錯誤を繰り返しながら様々な効果が生み出される…
「オンライン部活」を「リアル部活」再開までの建設的な空間にするという「挑戦」が本格的に始まろうとしています。
【序章】晴天の霹靂の全国一斉休校
オンライン部活への挑戦。それはあの日から既に始まっていたのかもしれません。
2020年2月27日、安倍晋三首相は同日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請する考えを表明しました。
生徒たちにとってまさに青天の霹靂となった3月2日からの全国一斉休校。
これまで当たり前のように行ってきた部活道、最後の試合や3年生を送る会などがことごとく中止され、卒業式の開催についてもほとんどの学校で大きく制限されました。
当時、多くの自治体で3月20日から25日頃までとされた休校。この間、部活動の禁止も通達されました。
しかし、この頃はまだ「4月には新学期が始まる」という漠然とした期待があり、一部には通常通りの活動が行われていた部活もあったといいます。
【混乱】同居する「情熱」と「同調圧力」
休校措置や不要不急の外出を控える自粛要請もむなしく、新型コロナウィルスの感染者は各地で日を追うごとに増加、いつ緊急事態宣言が出されてもおかしくないという状況に陥ります。
3月24日、文部科学省から小中高校での「教育活動の再開等について」という文書が、各都道府県・指定都市教育委員会教育長・各都道府県知事に通達されました。
休校延長はしないとしながらも、各地の感染状況を十分考慮したうえ「春季休業期間中はもとより、新学期以降も」感染対策には万全を期すること。この通達を受けた都道府県の対応は各地で感染度合いに差があることなどから足並みを揃えられず、いったんは部活再開を決めたものの、状況に応じて再び取りやめにするなどの混乱が起こり始めます。
当時はまだ夏のインターハイの開催がサッカーを含む各競技に「熱源」として残されていたこともあり、部活再開をよろこぶ選手も多くいました。しかし、その一方で「感染してしまったらどうしよう」「知らないうちに自分が感染を広げてしまうのではないか」という不安が拭いきれず悩んでしまう選手もいました。
学校は部活参加は「強制しない」とし、37度5分以上の熱がある場合はもちろん、保護者の承諾が得られていなければ参加不可としていましたが、インターハイ出場への情熱と「みんなが参加するから怖いけど自分も行かなくては」という同調圧力が同居する状態へと混沌を極めて行きます。
保護者からは部活を行うことで起こりうる感染拡大への不安の他、「責任の所在が曖昧になっている」と憤る声も多く聞こえました。
こうした中、東京都などを中心に感染者は増加の一途を辿り、政府はついに4月8日午前0時から東京・大阪など7都府県を対象とする緊急事態宣言を発令。4月16日には全国へと広げました。
予選大会が軒並み中止になり、インターハイも史上初の中止に。
現時点では、当初5月6日までとされていた緊急事態宣言を一ヵ月程度延長することも議論され、その結論を待たずに学校では休校が更に延長。部活再開の見通しが立てられない状況が今も続いています。
参考文献:東洋経済ONLINE 休校中の「闇部活」コロナ禍でも強行される異様
【変革】いちはやくサイバー空間へ
「リアルで出来た活動は動機づけのプロセスをきちんと踏みさえすればオンラインでも十分に可能なんです。」
部活の在り方が混沌を極めようとする中、いちはやくオンラインでの活動を始めたクラブがありました。
2月27日の休校要請の時点で「4月も新学期は始まらず、5月以降まで休校が続くのではないか」と懸念した東京都の私立学校、芝中学校・高等学校の技術工作部です。
「船舶飛行機班」「鉄道班」「自動車班」に分かれ、製作活動を主とする同クラブ。著作権者から承諾を得て「きかんしゃトーマスシリーズ」を製造する「鉄道班」がイベントでの「トーマス」の運転や、乗車型鉄道模型の製造を請け負う例を見ても、その活動は実に本格的です。
活動で得た売上金をクラブ費に充てるため、活動停止になればすぐに存続の危機に直面します。リスク管理という意味合いもリモート活動への早急な切り替えを後押ししました。
顧問の寺西幸人先生はこう語ります。
「リアル空間のメリットに、動機づけしやすいことがあげられます。動機づけには他の生徒から受ける良い刺激の他、みんなやってるから自分もちゃんとしないと、という恐怖に由来するものまで様々あります。オンラインではリアルに比べて動機づけが届きにくいというデメリットがあるでしょう。
しかし、オンラインだからこそ届きやすい、目標を持った建設的な動機づけがあることを改めて知るべきだと思います。まずは生徒がやったことをすべて受け入れる。それを応援し、さらに高い目標を提案してやる気をくすぐる…これらのプロセスで動機づけを行えばサイバー空間でもチームが止まることはありません。」
リモートの始動から1か月、生徒たちの意欲的な活動はSNSのグループで随時報告されています。
webミーティングはもちろんのこと、高校生が自宅のパソコンをリモートし、中学生にCADの使い方を教えるなど、想像以上の成果を上げているのだそうです。
混乱はまた、多くの試行錯誤と可能性をもたらします。
部活は今の状況を打開しようと新たな挑戦を始めました。そこには未来への可能性がたくさん示唆されているのではないでしょうか。
参考文献:AERAdot.部活をサイバー空間に移動! リモート部活が成功できたわけは?
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最後に
その日の出来に一喜一憂し、見つけた課題を明日への活力に変えるサイクルが突然失われた日から、自分には何ができるのかを必死に考える部活生。
命の尊さを説きながら、情熱を燃やして生きることを諦めさせたくないと打開策を模索する指導者の皆さん。
部活が活気に満ち溢れた本来の姿を取り戻すまで、オンラインでの活動を「建設的な空間」にするためにどうすれば良いのか、何が必要なのか。
インターハイが中止になった今も、これまでを無駄にしない運動部の「挑戦」は続いています。
意欲的な文化部が起こした変革や社会で生まれるアイディアも、その背中を押し続けるのではないでしょうか。
悩むこともあるでしょう。
それでも過ぎて行く日々の中で皆さんが新しい自分に出会い、積み重ねたものがやがて戻る日常に活かされていくことを信じ、心から応援しています。
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