フランスで行われているバル・ド・マルヌU-16国際親善トーナメントで、日本代表U-16は開催国フランスを3-2で破りました。
この試合、日本代表U-16は、フィジカルで勝るフランス相手に勝利しました。勝利の立役者となったのは、オフ・ザ・ボールの動きが秀逸な宮代大聖選手と、5人抜きのゴールを決めた久保健英選手、フリーキックで劇的な決勝ゴールを決めた中村敬斗選手でした。
この試合のみどころをご紹介します。
宮代大聖選手のオフ・ザ・ボールの動き
オフ・ザ・ボールとは、「ボールを持っていないときの動き」のことです。
サッカーで一番大事なことと言っても過言ではありません。なぜなら、プロ選手でも1試合の中でボールに実際に触っているのは数分程度。ほかの時間帯はすべて「オフ・ザ・ボール」だからです。
ボールを受けたのは赤い丸の宮代選手です。このあと、黄色い丸の選手にいったんボールを渡します。
返してすぐに相手ディフェンダーの間をすり抜けます。相手ディフェンダーの視線はボールに行っているので、宮代選手の動きにすぐに反応することができません。
黒い矢印が宮代選手の走ったあとです。すり抜けながら加速して、そのままシュート!
「ボールを持っていないときが勝負」という言葉を地で行くようなプレイです。
久保健英選手の5人抜き
保護者世代の方には、5人抜きというとメッシよりもマラドーナのほうがなじみが深いかもしれませんね。
こちらが5人抜きのシーンです。ジュニア選手にぜひ見ていただきたいのですが、「すごい!」で終わってしまわないように、注目ポイントを並べてみました。
いったい何が起こったのか?
5人抜き、しかも国際大会の舞台での活躍は並大抵のことではありません。ただし、久保選手は特に足が速いわけではありません。フィジカルがフランスの選手に勝るわけではありません。
では、なぜそこで5人抜きができたのか。
まず、ボールを受けたところです。
この後、久保選手は右後ろから来ているフランスの選手の前に回り込むように斜めにドリブルします。これは、ドリブルボールを取られにくくするための方法です。
先ほど右後ろから来ていた選手は青い矢印で示しました。完全に背負った位置です。こうなると、完全にボールを取りに行くことができません。後ろからボールに足を出した場合、ほぼ100%ファウルを取られるからです。
前にはフィジカルに恵まれた相手ディフェンダーがいます。
同じ写真です。まず、薄い黄色で囲んだ相手ディフェンダーとオレンジで囲んだ相手ディフェンダーは完全にボールを見ています。そのことにより、手前の黄緑で囲んだスペースが大きく開いています。
また、久保選手の後ろに見える赤で囲んだ選手も、久保選手を見ています。そのため、緑で囲んだ日本の選手がフリーな状態になりました。
久保選手の視線は前を見ています。視野が広く取れている証拠です。ここまで前を見るには、ドリブルがピタッと足についていなくてはなりません。この攻撃の際、一連の動きを通してみても久保選手の足から1メートル以上ボールが離れることはありませんでした。
足から離れないボールに横から足は出せません。このため、周りの選手は久保選手の足からボールを奪うことができないのです。もしここでボールを奪われそうになっても、右にも左にも出しどころがある形が出来上がっています。
そして、オレンジで囲んだ選手がスペースに背を向けて進路をふさぎにかかったところで、黄色い矢印の方向に切り込みます。
この少し前、オレンジで囲んだ選手の足が方向転換のためにクロスした瞬間に久保選手の進路が変わりましたので、おそらくそれを見た瞬間、相手の背中方向に走りこんだのではないかと思われます。
背中方面に回り込まれると、視界から一瞬消えます。そこで抜けて、シュート。
瞬時の情報判断のめまぐるしい繰り返し、足にぴったりくっついて離れないドリブルが生み出した5人抜きです。
中村選手のフリーキック
同点に追いつかれた試合を決めたのは、中村選手のフリーキックでした。そして3-2で日本が勝利。
ハイライトを、動画でどうぞ。
U16 : France-Japon (2-3), le resume
最後に
フィジカルで押し込まれると対応できない、ディフェンダーに高さがない、狭い場所でのキープがまだできないなど、もちろんまだまだ課題もたくさんあります。
しかし、ボールタッチの時間をなるべく短くして短いパスをつなぎ、相手を崩すサッカーという意図ははっきりと見えた試合でした。