インターハイが中止となり悲しい思い、残念な気持ちを抱えた高校生たち・・・
そんな高校生アスリートへエールを送る「明日への
このプロジェクトは全30競技の部活動を行う高校生に向け、アスリートや全国の有志からのエールを届けるという取り組みです。
第2回となる5/27(水)は元プロサッカー選手川口能活さん、那須大亮さんが高校生へオンラ
神奈川県、新潟県、山口県、沖縄県のサッカー部 約80名の選手が参加しました。
これまでの競技人生の中で川口さんや那須さんが困難を乗り越えた出来事や前を向いて進んできた経験を交え、「今だからこそ伝えたい」選手・指導者に向けた未来に向けてのメッセージに参加した高校生たちは真剣な面持ちで耳を傾けていました。(以下敬称略)(取材/江原まり)
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講師は元プロサッカー選手の川口能活さん、那須大亮さん
講師は元プロサッカー選手の川口能活さん、那須大亮さん。
サッカー選手として、これまで輝かしい結果を残してきたお二人にも、数々の困難、転機を越えて
川口さん、那須さんがオンライン授業にあつまった80名の高校生たちに、インターハイ中止決定後に考えてい
川口能活(かわぐち・よしかつ)
講師プロフィール
1975 年 8 月 15 日生まれ、静岡県出身。元プロサッカー選手
清水商業高校後、94 年に横浜マリノス(現・横浜 F・マリノス)に加入し、 2 年目には
J リーグ新人王のタイトルを獲得。以来、日本人 GK として初の欧州移籍を果たすな
ど、長年にわたって第一戦で活躍。アジアカップ 2004 での連続 PK ストップ、4 度
のワールドカップ選出など、日本代表でも数々の実績を残した。現在は指導者として
未来の日本代表選手育成に努める。
那須大亮 (なす・だいすけ)
講師プロフィール
1981 年 10 月 10 日生まれ、鹿児島県出身。元プロサッカー選手
J1 通算 400 試合 29 得点。2003 年Jリーグ新人王獲得。在籍した 6 クラブでは CB、
SB、アンカーをこなす守備のスペシャリストとして活躍。2020 年元旦の天皇杯決勝
を最後に現役引退。2018 年夏に自身の公式 YouTube チャンネルを解説し、様々な形
でサッカーの魅力を発信している。
司会進行はスポーツジャーナリストの生島淳(いくしま・じゅん)氏が担当されました。
「エールオンライン授業」で現役高校生と川口さん、那須さんが語り合ったこととは?
まずは現役選手から、今の気持ちについて発言がありました。
「みんなとサッカーができなくて寂しい」
「自主練中心なので、試合感覚も取り戻せないのではと不安。もっと自由にサッカーができたらいいな」
自粛でチームとしての活動がままならなかったこれまでを振りかえり、こういった本音が聞かれました。
それに対して、さっそく川口さん、那須さんから熱いゲキが飛びました。
川口
「自分に今できることは何かを考えると良いのではないか。」
那須
「自分で試合感覚と思っているのは、自分で頭の中で決めてしまっている部分。そこはあまり気にしない方が良い。今は全員が制限がある。その制限がある中でどんな工夫をするかが一人ひとりの差になると思う。」
続いて、話はお二人の高校生時代の話へ。
お2人はどんな高校生活を送っていた?
川口
「サッカー漬けの日々。朝練、学校、そのあとまた練習。
月曜日のオフ以外はサッカー漬けの毎日を送っていましたね。」
那須
「住まいも監督の元で下宿でしたから、本当にサッカー漬けの毎日。月曜日のオフ以外はサッカー漬けでした。」
お二人は将来をどのように描いていたのでしょう?
将来の夢はどう描いていた?
那須
「小学校の頃からプロサッカー選手になることを夢に思っていた。サッカー選手になること以外考えてなかったですね。」
川口
「Jリーグが設立されるかされないかくらいのころ。プロになるかというよりも将来もサッカーを続けたいと思っていました。
高校の時は4つ目標を持っていた。
・チームでレギュラー
・静岡県の選抜に選ばれる
・アンダーカテゴリーの日本代表に選ばれる
・冬の選手権に優勝する
目標をたてて、実際に紙に書いて部屋の壁に貼って、いつもそれを見て練習に行っていました。」
高校時代の努力と挫折
高校時代はどんな努力をされていたのでしょうか。
また、挫折したこともあったのでしょうか??
川口
「チームでレギュラーをとるために、スキルを磨く。練習から全力で取り組む。その結果、(ケガの期間を除き)コンスタントに試合に出させてもらえていました。
(苦しんだことと言えば)3年生の時にキャプテンになった。その時にチームが勝てない、空中分解しそうな、まとめきれない時があった。
監督からも仲間からも信頼を失うような時がありました。
言葉で伝えることが得意ではなかったので、選手をどうやって同じ方向に向かせたらいいのかと悩むこともありました。」
那須
「高校の練習自体もきつかった。1年生時は最低限のメニューをこなすので精一杯なくらい大変。
その中で、レギュラーになるため、その練習の意図を組みながら、しっかりとやることを意識していました。
自主練などでは自分の長所、ストロングを磨くことだけは毎日の中でやり続けていた。
(苦労した点といえば)3年生の頃、期待されていたチームだったが全国で勝てず、県大会で負けたりして結果を出せず、チームがバラバラになりかけていた。
軌道修正するのが大変でした。」
お二人とも、期せずしてチームをまとめる3年生としての苦労があったというお話に。
サッカーというチーム競技ならではの悩みに、リアルな高校時代のお二人の姿を想像しました。
今、現役高校生はどんな気持ちでいるのだろう?
「自分たちのチームもあまり戦績が良くなくて、自分たちが頑張ろうと思っていたが、コロナで大会がなくなってしまって、これからどうしていくか・・・」
「部活ができない状態。悔しい部分がある」
まだまだ気持ちの整理がつかない、割り切れない思いがあるのは当然ですね。
いよいよ川口さん、那須さんへ生の質問をぶつけるコーナーに続きます。
高校生からの質問コーナー
現役高校生の参加者からzoom画面を通して、直接質問が投げかけられました。
一部をご紹介します。
—練習で苦しくなったり、チームが苦しくなった時、どうしていましたか?
那須
「今の、苦しいとか辛いという気持ちを忘れて欲しくない。でも、ネガティブな暗い方に持って行って欲しくない。サッカー選手としてだけではなく、生きていくうえで辛い事があっても『気持ちをどうもっていくか』が大事。
苦しいという気持ちを、ネガティブな方に持ち続けていると自分の成長には遠回りになってしまう。
辛いことも「学びに変える」という発想の転換ができるといい。」
—どうやってチームをまとめるか、具体的に聞きたい。
川口
「キャプテンになってまとめようとして、まとまらなかった。それぞれの気持ちや考え方があって、みんなが元々同じ考えではない。大事なのはみんなが思っていることを言える環境が大事。
みんなが同じ方向を向くために、言葉を発しないと分かり合えないと思います。
みんなで意見をいえるような組織にする。言いたいことを言って終わりではなくて、意見をくみ取りながら最終的に同じ方向を向くということ。
自分の持っている思いを吐き出すことも大事。
吐き出して気持ちを整理して、落ち着かせて、みんなで戦おうと気持ちが一つになれると良いですね。
まずは、みんなの気持ちを知ることが大事。
自分だけよければ良いというわけでは無くて、みんなの気持ちを理解することが大事。」
—自分のチームでは前向きになっている選手もいれば、マイナスな方向の気持ちの選手もいる。チームの気持ちが一つになっていない。
川口
「主力の選手は必然的にモチベーションが上がる。でも試合に出られない選手はモチベーションが上がりにくい。そういう選手たち、なかなか上を向けない選手に声をかけてあげることが大事だと思います。」
—高校時代、大学時代、心の中で何を大事にしてやってきましたか?
川口
「負けたくない気持ちです。仲間に負けたくない、試合では相手に負けたくない。
それと、上手くなりたい、という気持ちが強かったです。
ピッチ上では負けたくない、上手くなりたいという気持ちだったけど、他には、謙虚さというのを大事にしていました。
聞く耳を持つという姿勢です。
今、僕は指導者の道を歩み始めまして、僕も学びの最中です。
学ぶためには素直さや謙虚さが必要だと思っています。
戦いの場では戦うのだけど、素直さや謙虚さが同じくらい大事だと思っています。」
—高校時代を振り返って後悔していることは?
那須
「もっと意識を高くもって練習していれば、もっとストロングポイントになったり技術が高くなったりしたと思う。
一コマ一コマ、練習にテーマを設定してやっていたら良かったと思います。」
—GKをするにあたって、一番大事なのは何ですか?
川口
「いろいろあるけど、メンタルであったり、冷静さであったり、熱さも必要。
熱いけど頭の中は冷静に。
キーパーに取って大切なのは『相手の攻撃に対して、自分のところに来い!』という強い気持ちが大事です。
シュートを打たれたくない、というのではなくて。
シュートに対して『自分のところに来い』という向かっていく強い気持ちが大事だと思っています。
それから、フィールドの選手を包む包容力も大事にしてほしい。」
—川口さんが思う、日本に求められるGK像は?
川口
「日本も世界も、サッカー戦術理解の力が求められている。
ベースとしてはテクニックやフィジカル。キャッチするテクニックや足元のテクニック。
フィールドプレーヤー並みにボールを扱うテクニックも求められています。
僕が思うに、一番大事なのはゴールマウスを守ること。
最後の砦ですから、ゴールをさせないこと、ゴールマウスを守ることがとにかく一番です。」
まだまだ他にも多くの質問が寄せられました。
お二人の「エールオンライン授業」はこちらから視聴できますので、ぜひご覧ください。
▶▶「エールオンライン授業アーカイブ動画」(19時に公開予定)
エールオンライン授業を終えて
川口さん、那須さんは何を感じたのか?
川口
「この状況の中、高校生の皆さんに強いメッセージを伝えられたかはわからないが、彼らの生の声を聴いて、この苦しい状況から立ち直って新しい目標を持って欲しいなと思いました。」
那須
「生の高校生の気持ちを聞いて、現状、とても辛い気持ちを持っていることを感じた。今日、私たちが言っていることが全てではないが、思考の中でヒントになればいいなと思った。
なかなかこうして生で話せる場はないので、自分自身の今後の活動の活力にもなった。
今日のオンライン授業が少しでもみんなの支えになるといいなと思います。」
那須
「インハイを目指してきた彼らの気持ちは計り知れないが、これが最後じゃないということを思ってもらえたらいい。
これから先の目標、目的を見据えてやってもらえたら。ここで立ち止まってはいけない。
いろいろな感情を自分の活力に変えて進んで欲しい。」
川口
「インハイというのは僕も全国大会に出させてもらったし、素晴らしい大会。
ただそれが全てではない、そこがゴールではない。
その先、高校によっては3年生が部活ができる。卒業した後もサッカーができるし人生は続きます。
新しい目標を立てる、新しい道に踏み出す勇気を持って欲しい。
半歩でもいいので、立ち止まらずに踏み出す勇気を持って欲しい。」
川口
「これから部活動が再開されて、大会などが始まった場合、準備期間が短い、トレーニングが短い。
そうなると、ケガのリスクが高まる可能性がある。
体が元気な年代ではあるので、体を動かしたりトレーニングをしたいという気持ちはわかるのですが、やりすぎないこと。
それから、短い時間の中で、仲間との時間を楽しんで欲しい。
まずは部活動が再開した時は仲間とサッカーができる喜びをかみしめて欲しいですね。」
那須
「限られた時間の中で、何をするか。しっかり考えて何をするかが大事です。
無駄な時間はないので、1分1秒を無駄にせずに取り組んで欲しい。
これからの時間を、濃く考えながら進んで欲しい」
今年で引退する3年生について、こんなエールも送ってくださいました。
那須
「人生は続くので今、感じている感情を無駄にしないこと。
悲しみ、辛さをそのままで終わって欲しくない。前に進んで欲しい。
すぐには無理でも気持ちや考えを高めて、次への目標につながるといいですね。
周りの人がそういう幅を広げてあげるといいのでは。
サッカー以外の事であっても今の気持ち、感じていることを大切にして進んで欲しい。」
川口
「ポジティブな考え方をしてもらうと、インハイが中止になったことはなかなかない事に遭遇してしまったともいえる。
そのあと、この悔しさをバネに新しいモチベーション、新しい目標をたてて、何かを成し遂げて欲しい。
仕事でサッカーに関わらなかったとしても、これからもサッカーを続けて欲しい。
(コロナ禍に遭遇してしまった)この年代の子には何かを成し遂げて欲しいですね。」
周囲の大人たちはどのように接したらいいのかと悩んでいます。
お二人が自身の経験を踏まえて語ってくださいました。
川口
「彼らの気持ちを考えると、軽率なコメントはできないが、彼らの年代でみんながこうした状況に置かれてしまった。
一人だけでない。彼らの年代の生徒がみな、同じ思いをしている。
決して独りではないといことを支えに前進してほしい。
周りの父兄の方々や先生方、関係者のポジティブな声かけが重要になると思います。
彼らに前進するエネルギーが湧いてくるのでは。」
那須
「父兄の方々も辛い思いをしていると思う。アドバイスには正解、不正解がないと思う。
生徒、お子さんに歩みよって、考え方を提示をしてあげないといけないですね。
大人の自分の主観だけでは違う方向に行く可能性もあるので、その子がどんな人間かというのを知ったうえで考え方を提示してあげる。いろんな考え方や乗り越え方があると思う。
自分で決めさせてあげるサポートを言葉や行動の中でしてくと、支えになるのではないか。」
最後に
今回の「エールオンライン授業」に参加した那覇高等学校 玉城 陽向(たまき ひなた)さん ( 3年生)
那 覇高等学校 崎原 誠顕(さきはら ともあき)さん (3年生)からは、
「自分もキャプテンをやっていて、川口さんのキャプテンのまとめる大変さなど分かる部分もあり、コロナの状況をどう過ごすかというところで、他の県の人も同じ思いなんだなとわかり、ポジティブに考えて頑張っていきたいと思った。」
「心持ちなど貴重なお話を聞けて充実した。那須さんの短い期間の中でも時間の使い方などこれからのサッカー生活の中で活かしていきたい。」
「3年生の集大成として(現在検討されている)県内大会は、チームとして頑張りたい。
プロの選手の高校時代の話が聞けたので、チームに持ち帰って向上していけたらと思います。」
「3冠を獲るという目標。インハイにかける思いが強かった。(現在検討されている)県内大会だけでもモチベーションを上げることができるので、頑張っていきたい。」
という、前向きな感想が聞かれました。
今まで誰も遭遇したことのない「新型ウイルスの影響によるインターハイの中止」という事態に、高校生の皆さんが気持ちの整理を付け、前を向くにはもう少し時間が必要かもしれませんが、今回の川口さん、那須さんのお話をもとに、「この事態をどんなふうに捉えて、消化していけばよいのか」というヒントをたくさんの人が掴めることを願っています。
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