今回はともパパさん(元・ブラジルにてジュニア・ジュニアユースチームアシスタントコーチ)からの寄稿で「ドリブルが超上手くなる!古武術の浮身とは?習得法も解説!」をお届けします。
古武術の動きである「浮身」と「沈身」は「予備動作がない」「動きが素早くなる」という二つの特徴があるそうで、この動きを身に着けるとドリブルの時だけでなく、相手を抜く時、ターンする時、止まる時などのいろいろなプレーに応用できるそうです。
ともパパさんがブラジルのサンパウロのクラブでジュニアとジュニアユースのアシスタントコーチをしていた際、当時のほとんどの子供たちは、自然と浮くような軽やかなドリブルをしていたのを覚えているそうです。
日本人でも、この古武術の「浮身」「沈身」の動きを身につけることで、こういったドリブルを身に付けられるのではないか、と考察されています。
習得のためのトレーニング方法も詳しく解説されていますので、冬の間に身に付けて、来年の春からの新シーズンのスタートダッシュに備えたいですね!(編集部)
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1.浮身・沈身・鞭身の仕組み
古武術の浮身、沈身、鞭身は、膝抜きと並ぶ大切な技術ですが、特にドリブルの上手い選手は必ず身に付けています。
こうしたテクニックは正しい練習をすれば誰でも習得できるので、育成年代の子供たちにはぜひ覚えてほしいですね。
そこで今回は、浮身、沈身、鞭身の仕組みと練習法、サッカーのプレーにどのように活かすのか?という点について解説します。
(1)浮身と沈身
浮身(うきみ)とは、次の動画のように体が空中に浮く動作を指します。
これに対して、浮いた状態から次の動きに移るまでの動作を沈身(ちんみ)と言います。
このようなスキルを覚えると、特にプレー中の動作の切り替えが素早くなります。
先ほどの中島選手であれば、最初は一対一の止まった状態で、その次がアウトで抜くわけですが、この二つの動作の切り替えがとても速いですよね。
また相手は、沈身の時に中島選手が突破しようとしているのにも関わらず、見入ってしまって反応が遅れています。
やはり、それだけ動きが早いということですね。
ただし、浮身はジャンプしているわけではありません。
どちらかと言えば、自然に体が浮いてしまう…という状態です。
もちろん浮身の画像をよく見ると、中島選手の左足のつま先がピッチに接しているので、実際には紙切れ一枚分だけ浮いたか?どうか?という程度ですが、浮いていることに変わりはありません。
ちなみに、海外のドリブラーで浮身と沈身を使いこなす選手は、かなり多いです。
2019年に日本代表にデビューした久保選手も、この動作を身に付けているようです。
その他には、長友、香川などが使いこなしていると思います。
こうした浮身と沈身は少し難しそうなテクニックですが、これが出来るか?どうかでサッカーの上手い下手がハッキリ分かれます。
(2)ドリブルの上手い下手
蹴球計画さんのブログには、体が浮くこととドリブルの上手さとの関係について、次の記事が掲載されています。たぶん浮身と沈身のことを語っているのでしょう。
浮く選手にはできて、浮かない選手にはできないプレーが確かに存在する。
浮くことが出来ない選手は、浮く選手に比べて技術的に劣ることを意味する。
これはドリブルを考える際に極めて重要である。
例えば、単純なアウトの切り返し一つをとっても、浮くことを意識して練習した選手とそうでない選手の間で、技術的に大きな差がつくことは自明な結論として得られる。
さらに、トリックもしくは足技と呼ばれるものだけをいくら練習しても、本質的な意味でドリブルが上手くなることはない。
なぜなら、ボールを触る以前の浮くか浮かぬかの段階で上手下手は分化しており、それに目を向けずに目先の技数だけを増やしても意味がないからである。
これまで、ドリブルの巧拙を語るにおいて、重心の高低、タイミング、リズム、ステップ、足技、ボールタッチ、コース取り、重心の見切り等、様々な言い回しが存在した。
しかし、ドリブルの上手下手を分ける動きの上での顕著な特徴は、浮くことを基本として持つか否かである。
このことは、これまでに大きく欠けていた視点であると言える。
【引用出典・蹴球計画「上手と下手を分けるもの」】
要するに、どんなに難しい抜き技を覚えても、体が浮かない限り、決してドリブルは上手くならない…ということで、そうした点は私も同感です。
この記事は2012年2月に掲載されたものですが、ドリブルと浮きの関係について説いたのは、日本で初めてかも知れません。
私は30年前に、ブラジルのサンパウロのクラブでジュニアとジュニアユースのアシスタントコーチをしていました。
当時のほとんどの子供たちは、自然と浮くような軽やかなドリブルをしていたのを覚えています。
たぶん、自然と浮身が身に付いていたのでしょう。
これに対して、浮身と沈身は日本の古武術由来のスキルなので、日本人なら誰でも出来て良いはずであり、海外の選手にしか出来ないということはありません。
ところが、日本の育成年代の指導では幼少期から両足練習をするため、体幹と軸が弱く、体が開いた選手をたくさん育ててしまう…という弊害があります。
実は、こうした状態で育った子供には浮身や沈身が身に付き難いので、ドリブルの上手い選手はなかなか育ちません(詳細は後述します)。
そうした点については、警鐘を鳴らすべきではないかと思います。
ところで浮身と沈身は古武術のテクニックですが、現在はいろいろな競技(バスケットボール、野球、陸上競技など多数)に受け継がれています。
そこで浮身と沈身がなぜ大切なのか?という点で、次にこの動作の特徴(メリット)を考えてみましょう。
(3)浮身と沈身の特徴
浮身と沈身には、二つの特徴があります。
一つ目は予備動作がないこと、二つ目は動きが素早くなることです。
この場合、空手、ボクシング、フェンシングなどの格闘技を例にすると、浮身と沈身を使わない時は「しゃがむ」→「地面を蹴る」という二段階の動作が必要です。
その際、しゃがむのは「これから攻撃するぞ!」というサイン、つまり予備動作になるので、これを見た相手は防御するか反撃するかのいずれかの体勢を取ります。
そうすると予備動作を見せると、相手に対して次の攻撃を教えてしまうわけですね(サッカーのドリブルであれば、抜く方向にボールを動かそうとする動作など)。
また地面を蹴るのは、足の力で自分の全体重を頑張って運ぶのと同じですし、地面の摩擦抵抗も受けるため、筋力がないと速く動けません。
これに対して浮身の動作は、相手からすると、まるで立っているだけのような状態に見えます(動く気配がない)。
つまり予備動作がないのです。
そして次の瞬間には、いきなり攻撃されてしまうわけですね。
その際、浮いた状態から重力落下する沈身は、地面を蹴って攻撃するような摩擦抵抗がなく(一種の無重力状態)、筋力の有無もほとんど関係ないことから、非力な人でも素早く動けます。
特に武道の達人は、決して強そうなそぶりを見せず、リラックスして自然体に構えながら、いきなり目にも止まらない速さで相手を倒してしまいますよね。
倒された方は「えっ?どうして?」となりますが、この原理はとても簡単で、浮身と沈身を上手く使っているので、相手は全く反応出来ないのです。
ちなみに、次の動画は私の息子「とも」が股抜きをするシーンです。
この時の私は「次はどんな抜き技で来るんだろう…」と考えていましたが、次の瞬間にはいとも簡単に抜かれてしまいました(笑)。
ハッキリ言いますと、ドリブラーが浮身と沈身を使うと、ディフェンス側は防ぎようがないわけですね。
要するに、浮身と沈身を使うとドリブルが上手くなるというのは、こういうことなのです。
以上のように、浮身と沈身には「予備動作がない」「動きが素早くなる」という二つの特徴がありますが、ドリブルの基本の部分では、やはり上手い下手の分かれ目になると思います。
また、相手を抜く時、ターンする時、止まる時などのいろいろなプレーに応用できますし、ドリブル以外にも使えるので、育成年代の子供たちにはぜひ覚えてほしいですね。
サッカーへの応用・習得法についてはこちら!(少年サッカー育成ドットコム)
寄稿:元・ブラジルにてジュニア・ジュニアユースチームアシスタントコーチ
ともぱぱ(少年サッカー育成ドットコム)