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3年生全員で挑んだ淑徳高校サッカー部(東京)。「点差の中には、私たちしか知らないストーリーがある」

全国サッカー選手権予選は、高校3年生の引退を決める大会でもあります。8月23日まで行われた全国高校サッカー選手権都大会1次予選では282校中、249校が敗退しました。そのなかで印象的な引退試合を繰り広げた学校をご紹介します。

今回取り上げるのは淑徳高校サッカー部。その引退試合に至る道のりにはたくさんのドラマと想いがありました。
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2019年度は公式戦で一度も勝利することができていなかった淑徳高校サッカー部。

選手権予選2回戦で初めての勝利を決めると、続けて準決勝も怒涛の快進撃を見せ、ついに都大会進出の切符をかけたブロック決勝へコマを進めました。

決勝の結果は0-8。2019年度関東大会東京都予選ベスト8の都・国分寺(T3)に敗れました。

ブロック決勝まで、彼らはどんな軌跡を歩いたのか。敗戦を告げたTwitterの中で、「点差の中には、私たちしか知らないストーリーがある」と言いきった過程に迫るべく、インタビューを行いました。

2019年度 第98回全国高校サッカー選手権大会 東京都大会 1次予選 12ブロック結果


12ブロック
決勝8/23
淑徳  0-8 都・国分寺(T3A/1次T出場)
準決勝 8/20
淑徳 2-1 城西大城西
1,2回戦 8/15
淑徳  2-0 都・本所
2019年度 第98回全国高校サッカー選手権大会 東京都大会 1次予選 12ブロック結果)

奇跡の『終わり方』(公文 和人 監督インタビュー)

準決勝に勝利し、決勝の相手校が都立国分寺に決まったときからのチームについて教えていただきました。

試合前夜

どの指導者もアドバイスをくださったように、「引いてカウンター」を選択していたが、それでも勝ちきれる可能性は少なかった。
選手たちと話し、いつも通り前からプレスをかけ、ハードに動いて攻めていこうということになった。
大量失点は覚悟しなければならなかった。

その決断をしたときに、レギュラーではなかったが、3年生10人全員をスタメン起用し、残りの1人は2年の次期キャプテンとした。 やはり上手い下手ではなく、ここまで勝ち上がったのは3年生の力。

負けている試合にお情けで3年生を途中出場させるのは失礼であると思った。選手権は3年生の大会であることを再確認させてくれた。

いつか終わる試合をどう終えるか。

この大会、この3年生には『終わり方』を追求してきた。
賛否両論あるとは思うが、一つの試合の終わり方だけでなく、最後の試合の迎え方(終活のような)も求めてきた。
いつか終わるこの大会をいつ、どのように終えるのかというのを選手と考えてきた。

今まで公式戦で一回も勝てなかったということもあり、せめてこの大会は強いところとしっかり戦って負けたかった。
この試合までの経緯は省略するが、この試合は私は初めての経験をした。
大差で負けてはいるものの、選手たちは常に気持ちが前向きで、負けた後も誰一人涙せず、むしろ笑顔で終わっていた。(負けてヘラヘラしているものではなく、本当に心からの笑顔) 彼らにとっては悔しさよりも達成感、良い終わり方をしたという評価だった。

私たち指導者も、その試合をジャッジしてくれた審判団も、選手の最後まで清々しい試合に感銘を受けた。

相手の陣地に入れずに終わった前半を終え、ハーフタイムには相手陣地に入ってイメージを共有した。

シュートが打てなかったから給水タイムでゴールにシュートを打ってみた。
コーナーがとれなかったから給水タイムにコーナーの近くでコーナーアークを凝視してる選手がいた。

相手陣地に入ったあとにはビッグチャンスが生まれ、無人のゴールにシュートを打った給水後はシュートが生まれ、コーナーも数本得た。
徐々に失点はかさんでいくが、彼らがその試合の中で望んでいたシーンは一つずつ達成されていった。

僕らの「奇跡の『終わり方』」

誰よりもフェアに、誰よりも純粋にサッカーを楽しんでいる選手たちを心から尊敬した。

この奇跡の『終わり方』を、今後経験することは難しいかもしれない。それを達成させてくれた強豪国分寺にも感謝している。

今後このような終わり方は経験できないかもしれない。考え方に賛否はあると思う。
しかし、全国を狙うようなチームではない我々にとって、この終わり方は最高のものであった。

先日、3年生の保護者のご両親たちと話し合う機会があったが、私と同じようなポジティブな印象を持ってくれていたので、それも嬉しかった。
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選手へのインタビュー

戦い抜いた選手たちにインタビューに答えていただきました。

Q,選手権1次予選の感想をお聞かせください

「苦しい試合もあったが勝ちきることが出来た。予選決勝では強豪相手で大敗だったが自分達の出せる最大限の力を発揮出来た。とても楽しい試合でした。」

「これまで1回戦で負けてきただけに1試合だけでも勝とうとみんなで頑張って、決勝まで勝ち進めて良かった。最後は大敗したけど、むしろ国分寺といういいチームに対して3年全員でぶつかれたこと、みんなが最後笑って終われたことが本当に良かったと思う。」

「やっと勝てたという喜びでいっぱいでした。」

「3年としての選手権はやっぱり今までとは全然違った緊張感で、最初は固くなっていたけど、試合をこなすに連れて楽しさも出てきて最後は笑顔で終わることができて本当に良かった。」

「新人戦、インハイともに1回戦敗退という結果で最後何が何でも1回勝とうとみんなで頑張って予選決勝までいった。 相手が国分寺でも自分達は誰1人として引いて守りきって勝とうとは思ってなかった。自分たちのサッカーをやって結果的に大敗になったが大敗に後悔はしてない。最後3年全員が笑って終われて本当に良かった。」

「技術的に及ばない点は多々あったが、チームの協調性は素晴らしかった。悔いはない。」

「自分たちの代になって公式戦で1回も勝てていなかったチームが最後の最後で2勝できてとても嬉しかったです。最後の国分寺戦は全く歯が立たなく力の差を見せつけられましたが、みんなが笑顔で引退することができていい終わり方だったなと思います。」

「フル出場できなかったのは悔しかったですが、10年間やってきた中で1番充実していました。」

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Q,淑徳高校サッカー部とはどのようなチームですか

「雰囲気の良さと笑顔の絶えない最高のチーム。」

「1年生や初心者も混ざり合って全員がお互いを刺激し合いながら成長していけるいいチーム。素晴らしい先生方をはじめとし、様々なことに恵まれているチームだと思う。」

「チームメイト思いのとてもいいチームです。 選手が色々なポジションをやっているのでいろんな変化にも対応できるチームです。」

「やる時はやる、オンオフの切り替えが出来るけじめあるチーム。」

「協力し互いを刺激し合い、切磋琢磨しながら1日1日成長し、サッカー以外のことも学べるチーム。」

「気分屋が多いので、乗れば強い。」

「監督が全て決めるのではなくてしっかりと選手の意見を聞いてくれ、監督、コーチと選手の距離が近いチームです。 部員数が少ないからこそ出せる仲の良さ、家族のような雰囲気があります。 とても仲がいいです!」

「コーチや監督にも恵まれており、自分で考え、発信し、実行するという今後社会に出て必ずと言っていいほど必要な能力を培え、かつ、とても明るくて楽しいチームです!」

Q,3年間一緒にやりきった仲間、チームへのメッセージ

「3年間辛いこともあったけど楽しかったです。ありがとう。」

「3年は夏の選手権まで全員でやりきれてほんとに楽しかった。個性豊かなメンバーだと思うけどサッカーを通して一つになれて、最後は笑って終わることができて良かった。本当にみんなには感謝している。」

「最後の大会では自分は大したことをできずに終わりました。だけど、3年間楽しくできたのはチームメイトのおかげです。ありがとう。」

「怪我がちな自分を支えてくれて、そして引っ張ってくれてありがとう。自分らが最高学年になってからはあっという間でもっと一緒にやりたかったのは本音。けど、ああやって笑顔で終われたのは本当にすごいことだと思う。一生のチームです。そして仲間です。」

「この3年間、本当に毎日が楽しかった。 春でやめる人もいなく、3年全員で最後までサッカーできて良かった。 ありがとう。」

「責任を投げつけるのではなく最後までチームの事を全力で考え悩んでくれた3年のみんなに感謝。」

「こんな部長についてきてくれてありがとう。 最後まで部長らしいことはできなかったけど、自分がやりたいって思ったことをすんなりと通してくれたり、相談に乗ってくれたりみんなでこのチームを作れて本当に良かった。 自分が支えなければいけないのに、とっても支えられました。 そしてマネジャー、ありがとう。 一人しかいなかったのに最後まで続けてくれてありがとう。 自分では気づいていないかもしれないけどあなたがいたからチームが成り立っていた部分はかなりあります。お疲れ様でした。」

「とてもメンタルが弱い僕でしたが、鼓舞してくれたキャプテン始め、3年生のみんなには感謝してもしきれません。もちろん先生にも。こんな仲間に恵まれてとても幸せでした。今までありがとう。そして、これからも長く付き合っていきましょう!」

Q,後輩へのメッセージ

「先生を信じて頑張ってください。今後の良い結果を期待してます。」

「俺らの代は決してお手本になれたり、尊敬できるところがある代ではなかったと思う。けれども、俺らのサッカーに対する姿勢や夏に向けた成長は後輩達が一番間近で見ていたと思う。こんな俺らから少しでも刺激を受けて、俺らよりもいいチームを目指して頑張ってほしい。」

「後悔先に立たず! 悔いを残さずやりきれ!」

「もっとコミュニケーション取りたかったなって今更ながら思ってる。自分が言えるのは怪我だけは気をつけろってだけです。無理は絶対にしない、やれる時を充実させる。それでいいんだよ。 あとは本当に仲間を大切にしてください。」

「自分は、2年の時にもっとこうしていればと思うことがある。だから、後悔しないように、今1秒を無駄にしないようにして 欲しいと思う。そうすれば自然と結果もついてくると思う。今後、良い結果を聞けることを楽しみにしてます。」

「自分で考えて動け。」

「1日1日を大事にして日々レベルアップしてください! スポーツと勉強は同じです。 練習は授業にあたり、試合は模試にあたります。 勉強では予習復習をするようにサッカーでも実践してみてください。 そして目標をたててそこから逆算する形で日々のスケジュールを決めてください。 そしたら必ず学力と同じように技術も向上すると思います。 でも最後は質が大事なのでしっかりと楽しみながら練習を頑張ってください!基礎が一番大事です! まずは都大会出場という目標を掲げて頑張ってください!」

「夏まで続けた方がこの先どんなに苦しいことがあっても生きていけると思います。いっぱい悩んでいっぱい走っていっぱい考えてください。最後の最後にサッカーやっててよかったって思えると思います。」

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彼らは今まで共に戦ってきた仲間への感謝を口を揃えて語っていました。
仲間であり家族のようなチームは常に支え合い、助け合ってこれまでやってきたそうです。

部員が少ないからこそ、強豪校ではないからこそ淑徳ならではの絆が生まれたのではないでしょうか?
そんな彼らの姿を後輩達はいつも間近で見ており、憧れを抱いていたに違いありません。

最後まで全員戦った3年生の姿を間近で見ていた後輩達も、また自分達のドラマをこれから作っていくのではないでしょうか。
そう思わせてくれる選手たちでした。

淑徳高校サッカー部紹介

淑徳高校サッカー部は現在スタッフ3名、選手24名、マネージャー1名で活動しているチームです。

「1/100ではなく1/11として活躍しよう!」というテーマを掲げ、強豪校のBチーム所属ではなく、名もないチームを成長させ、それらの強豪に勝っていく喜び、達成感を味わい淑徳高校で1/11の選手として、強豪を倒していきたいという想いのもと日々生徒と向きあっています。

厳しい練習と過酷なスケジュールの中で、サッカー技術の向上はもちろん、他者への気遣い、十分な人間性を養うことも目的として活動しているそうです。
参照サイト:淑徳高校サッカー部 HP

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最後に

今回淑徳高校サッカー部さんへの取材で、公文監督が語る「奇跡の終わり方」に触れることが出来ました。
結果を残すこともとても大切なことですが「結果よりも大切なもの」に彼らは気づいたのだと僕は思います。

サッカー選手である前に高校生である彼らはこれから大人になる前にとても大きな経験と財産を手に入れたのではないでしょうか?
チームメイト、スタッフの方々で作ったこのドラマは今年限りのものですが、また来年、再来年、後輩たちがそれぞれのドラマを繰り広げてくれるのだと思います。

高校最後の大会。
全チームが全身全霊をかけて挑む2019年度 第98回全国高校サッカー選手権大会。
我々ジュニアサッカーNEWSスタッフ一同は最後まで全力戦うチームを心から応援しています。

1次予選を追いかける中で、ライターの心をつかんだ高校をご紹介していきます。
高校3年生最後の大会を記事に残してみませんか?
写真などの情報をお待ちしています。大会の記事に掲載させていただきます。


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