ハイカットスパイクを知っていますか?ブラジルワールドカップで数名の選手が着用していたことから話題になったスパイクです。
アンドレス・イニエスタやマリオ・ゲッツェはナイキマジスタを愛用しているそうです。最初は珍しく感じましたが新しくてカッコイイデザインですね!
長友選手が履いているこのNIKEのマーキュリアルヴェイパー スーパーフライはC・ロナウドやズラタン・イブラヒモビッチ、フランク・リベリーら20人以上のスピードスターも履いていることで人気のあるスパイクです。
大久保選手が履いているこのNIKEのナイキ ハイパーヴェノムはネイマール、ルーニーも履いていることで人気があります。
サッカーにハイカット?
本当のところどうなのか、調べてみました。
ハイカットにまつわる疑問
photo:Mariya Butd
ハイカットスパイクをまだ見たことがない保護者の方に、ハイカットスパイクについて聞いてみました。
「なんでハイカットなの?」
「足首に当たって痛くなったりしない?」
「実際に履いてる子ってどう思ってるの?履きにくくない?」
「これ、大会のレギュレーションは大丈夫なの?ストッキング止めのテープでさえ、同色のみっていわれてるのに…」
「洗うのが大変そう」
「うちの子は足首が細いんだけど、だぶだぶにならない?」
皆さん、興味はあるけれど果たしていいのかどうかわからない、という感じでした。
その疑問をひとつずつ調べてみました。
なんでサッカーにハイカットなの?
ーー 迅速性を高めるためです。
今のサッカーは、一昔前と比べて、「素早い判断、素早い動き出し」がより必要とされています。ちょっと前よりも、ジュニア世代においてさえ「戦略」「戦術」という言葉を使って説明されることが増えてきました。それらを可能にするのは、迅速な判断と動き出し。相手より早く制地権を取ることにより、左右されるのが戦術だからです。
動きも、直進の動きだけでなく、前後左右、しかもクイックネスを必要とする動きが主になってきています。
クイックネスを追求するなら、ローカットのほうが足首部分を動きやすくできます。けれど、ローカットには一つの危険が付きまといます。それは、「捻挫をしやすい」というものです。
ハイカットスパイクを調べると、捻挫についての関係性を言及している商品はありません。しかし、バスケットシューズを調べていくと、シューズの形状と足首の捻挫の関係は深いということが分かります。
ハイカットスパイク
ローカットそのものよりも、足首への負担も軽減されることが推測されます。
ちょっとおまけ:バスケットシューズのこと
バスケットボールのシューズになぜハイカットが多いかといえば、「捻挫をしないため」です。
バスケットボールはサッカー以上に体を前後左右に振るスポーツです。そのため、どうしても足首部分に負担がかかるためにハイカット部分は固定式で、固めの素材を使っています。
バスケットボールにも、ローカットのシューズは存在します。ローカットのシューズは足首の動きを妨げないため、よりクイックネスを必要とするバスケの動きに対応します。ところが、ローカットのほうが足首の捻挫の発症率は多いのです。
順天堂大学の研究でも、ハイカットのほうがローカットに比べて足関節ねんざの予防に有用であることが指摘されています。
参考記事:バスケットボールシューズの違いが足底圧に及ぼす影響(順天堂大学)
現在は、バスケの世界でもくるぶしまでのミドルカットのシューズが主流です。足首への負担とクイックネスを両方兼ね備えたシューズとして、需要はどんどん伸びているようです。サッカーのハイカットスパイクは、バスケットのミドルカットのような位置づけです。
バスケのようなハイカットが足首を保護することをわかっていても、サッカーにおいては、クイックネスを阻害されることは、即パフォーマンスが落ちることにつながります。
クイックネスと足首サポートの並立を追求した形がサッカー特有のハイカット・ミドルカットのスパイク
足首に当たって痛くならない?
ーー なりません。サッカー特有のハイカットシューズはニット素材だからです。
サッカーで使用されているハイカット部分の素材は、靴下のようなニット素材です。足首部分を固定してしまうことは、俊敏な動きができないことにつながるからです。
柔らかく足首をホールドする素材(ナイキのものは、ナイキ独自のフライニットテクノロジーを使用しています)を使うことにより、足と脚の部分を一体化させるデザインを採用しています。
イメージは「外科医の手袋」だとか。外科医の手袋は、手首まである普通のゴム手袋ではなく、肘まである独特の形状です。
あの手袋が肘まであるのは感染対策のためですが、外科医は非常に緻密な作業を指先で行うため、手袋が指の動きを阻害するものであってはいけません。
サッカーのハイカットスパイクは、ハイカットであるがゆえに足先の精密かつ柔軟な動きを阻害してはいけません。
その点で、サッカーのハイカットスパイク
NIKKEI TRENDY NET
ナイキ“ど派手な足袋スパイク”がブラジルW杯を席巻!?
レギュレーションは大丈夫?
ーー 大丈夫なようです。
日本サッカー協会のユニフォーム規定によると、
ストッキング(ソックス)の上にテープやバンテージを巻く、あるいはアンクルサポーター等を着用する場合、そのテープ等の色はストッキング(ソックス)の主たる色と同じものに限る。
(引用:サッカー競技規則 2015/2016)
という記載があります。ハイカットスパイクのブーツ部分はストッキングの色と必ずしも一致しないため、レギュレーションに引っかかるかどうかを気にする保護者がいるのは納得です。
特に、2013年からストッキングテープの代わりに白いテーピングを利用することも不可になりました。そのことから、ハイカットスパイクのブーツ部分がこのレギュレーションに抵触するのではないかという心配も耳にしたことがあります。
ですが、ストッキングテープは「ライン」に見える可能性があるための「不可」であると解釈されるのが主流です。ハイカットスパイク
Jリーグで履いてプレーしている選手もいます。レギュレーション違反にはならないと考えられます。
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洗いにくいの?
ーー 意外ですが、「プラスマイナスゼロ」というコメントを聞いています。
保護者の方にも聞いてみたところ、
○小石が入らないので、靴の中(ストッキングも)を洗うのがとても楽
というメリットと、
●足首部分まであるので、乾燥させるにも時間がかかる
というデメリットがありました。シューズドライヤーを使うと難なく乾くようなのですが、シューズドライヤーを使わなければちょっと乾かすのに工夫が必要なようです。
土のグラウンドでプレーしている選手をお持ちの保護者の方は特に「ストッキングが汚れない!」と絶賛です。
乾きにくさと汚れの減りで、プラスマイナスゼロ。ほかのスパイクと違うため、比べられないというところのようです。
実際に履いている選手はどう感じている?
実際に履いてプレーしていた選手(東京都・U15・DF)にお願いして、履き心地や選んだ理由、プレーの変化などについてメッセージを送っていただきました。メール本文はそのまま掲載しました。
ハイカット
は、普通のスパイクとは違くスタッドの数が他の靴より2倍くらい多いのです。そのためグリップ力が他のスパイクよりは強いです。それと、スタッドが多いため体重の分散が良く効きます。そのおかげでピッチの中で長く走ることが可能になります。 ハイカットを選ぶときのキッカケとなったその一つはケガを予防してくれる所です。ハイカットの靴下もどきの部分がバネの役割をしてくれて挫いても足が戻ってくるような感覚になります。(経験済み)
もう一つは、足とスパイクに一体感を与えてくれる所です。足首から繋がっているのでブーツみたいだと思う人もいるかもしれませんが実際にはすごく厚手の靴下を履いているような感覚になります。そのためキックや足技に独自のこだわりがある人にはオススメです。
キックの時は足のどこに当たっているのかも明確に分かりキックにこだわりが持てます。それと、ボールタッチも繊細にできるのでさらにこだわりが持てます。
スタッドが「ジュニアに推奨される型」に適合!
スタッドは、一般的に「丸型」「ブレード型(刃型)」があります。形状はメーカーによって違い、丸といっても楕円に近い丸を採用しているところや、スパイク前方と後方で形を分けているものがほとんどです。一例としては、「バサラ型」「トライアングル型」など、オリジナルの形状を採用しているメーカーもあります。
大きく分けると、
丸型…柔らかなボールタッチを求めるのに使用
ブレード型…キック時の安定性を高めるグリップ力を求めるのに使用
という使用用途の違いがあります。
特にジュニア選手の場合は、成長期の足の負担を軽減する目的で丸形が推奨されます。早稲田大学スポーツ科学学術院教授の福林徹先生によると、成長期の足には(土や人工芝のグラウンドの場合)、
・丸いポイントがたくさんあるもの
が望ましいとされています。
参考記事:サッカースパイクは丸型のポイントが多いものを選ぶべき理由(サカイク)
清水エスパルスのメディカルブログにも、丸形+数の多いスタッドのものが子どもの足には推奨されるという記事があります。
参考記事:【メディカルブログ】vol.2 スパイクシューズの選び方(清水エスパルスオフィシャルブログ)
ポイントが多いと、足にかかる衝撃や負担が分散されます。ハイカットスパイクはプレート全体に丸形のスタッドが数多く配置されており、あらゆる方向への動き出しが素早くできるというメリットと、衝撃や足への負担から足そのものを守るというメリット、2つのメリットがあるのです。
実際数えてもらったところ、普通のスパイクのスタッドが10~13程度なのに対し、ハイカットスパイクには22個の丸いスタッドがあったそうです。もちろん、メーカーによっても違いますが、比較的個数が多いものが多く、15個~25個ついているものもあるようです。
「挫いても足が戻ってくる感覚」
これがハイカットスパイク
「厚手の靴下」という通り、かなり足首の細い選手でなければ中でぶかぶかと浮いたりもしないようです。
迅速性を高め、より素足感覚に近いキックができるようになり、なおかつケガの予防やジュニアの成長期の足への負担も軽減してくれるスパイク。それが、ハイカットスパイクが支持されている理由です。
ジュニアに話題のスパイク一覧
ナイキ ハイパーヴェノム
大久保、ネイマール、ルーニー選手愛用
ナイキ マジスタ
イニエスタ、マリオ・ゲッツェ選手愛用
アディダス エース 16+ ピュアコントロール FG・AG
エジル、オスカル、ラキティッチ選手愛用
ナイキ マ―キュリアルスーパーフライ
長友、C・ロナウド、ズラタン・イブラヒモビッチ、フランク・リベリー愛用




プーマ エヴォスピード


酒井宏樹、西川、セルヒオ・アグエロ、オリヴィエ・ジルー選手愛用
ミズノ バサラ
岡崎選手愛用
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最後に
サッカーで一番重要な道具はスパイクです。いろいろ調べていくにあたり、「上手な選手でスパイクに興味のない選手はいない」ということを改めて知りました。
スパイクがすべてを解決してくれるという他力本願的なことではなく、自分の持っている力をすべて引き出すためにはどのスパイクが良いか、求めているパフォーマンスに近づくにはどのスパイクが良いかを考えて選ぶのが正しいスパイクの選び方です。
ジュニア世代には、「サイズアウト」が頻繁にあります。足のサイズが固定する前に、いろいろなタイプを試して良いものを選んでください。
メッセージを送ってくださったU15選手、ありがとうございました!