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追い詰められるアスリート 乗り越えるカギは「認める」こと

テニスの大坂なおみ選手やサッカーのアンドレス・イニエスタ選手(ヴィッセル神戸)などのトップアスリートが「うつ」もしくは「かなり不安定な精神状態」であることを告白する機会が増えてきています。
メンタルヘルスの問題は、トップアスリートにとっても一般人にとっても身近な問題になってきています。

肉体的にも精神的にも追い詰められるアスリート

アスリートといえば、屈強な肉体や高い技術と併せて、強い精神力を持ち合わせているとイメージする人も多いのではないでしょうか。
しかし、最近、テニスの大坂なおみ選手や、サッカーのアンドレス・イニエスタ選手(ヴィッセル神戸)が「うつ」や「かなり不安定な精神状態」であることを告白し、トップアスリートとうつの関係が浮き彫りになりました。

かつてサッカーJ1サンフレッチェ広島(広島市)で活躍してした双子の元Jリーガー、森﨑和幸さんと浩司さん(40歳)も現役時代のうつ病を告白し、手記を出版しています。

お2人ともまじめな性格で、責任感が強く、「褒められたい」という承認欲求が強くあったと言います。
「チームが負ければ自分のせいだと考える。もっと自分はうまくプレーできるのに、と自分を追い詰めた」と和幸さんは語っています

浩司さんは「80%の力を出せばいいから」というアドバイスに特に苦労されたそうです。
アスリートは常時100%の力を出し、時には120%の力を求められて成績維持し、競技の頂点を目指すことを課せられていたのですから、すんなり受け入れられないのも当然かもしれません。

「『ミスしたらどうしよう』ではなく『次に挽回すればいいや』と考えることにしました」と浩司さんは振り返っています。

お2人の共著『うつ白~そんな自分も好きになる』(TAC出版、2019年)には、心の葛藤や症状、対処法が素直に書かれています。

勝者は1人という、ビジネス界とは違う非常にシビアな世界であること、そして結果が必ず白黒つけられ周りに知られてしまうことも大きな原因のひとつです。

また、健康とは言い難い身体づくりもあげられます
必要な脂肪まで削って良い成績を上げるためだけに鍛え上げられた身体は、健康という側面で見るとストイックすぎる状態ともいえます。

さらに、試合や大会に近くなると興奮状態が続き、不眠症を訴える選手も多くいます。

つまり、アスリートはいくら元々メンタルが強いとしても、非常に厳しい世界の中で、極限状態で戦っているため、肉体的、精神的にもかなり追い詰められています。
そんな追い詰められた状況で誹謗中傷をSNSなどで受ければ、心に大きな傷を受けてしまうことは容易に想像できます。

弱さを認めることが出来ない

よく見かける「メンタルヘルス」という言葉は、どのように定義されているのでしょうか。

世界保健機関(WHO)ではメンタルヘルスの良好な状態を次のように定義しています。
「自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる健康な状態」

心の波の影響で、正常な状態を保つことが難しくなることで、メンタルヘルス不調が起こります。
メンタルヘルスの問題は、アスリートに限らず、あらゆる人々に共通する問題といえるのではないでしょうか。

「弱さを認めることが出来ない」ことがうつになりやすい原因のひとつにあげらいます。
弱さを認められず苦しんでいる人には、優秀な人もいます。
優秀だからこそ、自分の弱さを認めることに抵抗があるのかもしれません。

弱さを認めることは、匿名という形をとっても難しいようです。

日本ラグビー選手会と国立精神・神経医療研究センターが共同で立ち上げた「よわいはつよいプロジェクト」が、2019年に行った国内ラグビートップリーグの選手を対象に行ったアンケートでは、1ヶ月で心理的なストレスを感じている人が回答者のうち約3~4割ありました。
1割の人が「うつ・不安障害の疑い、あるいは重度のうつ・不安障害」が疑われることも結果で分かりました。

プロジェクト関係者が注目するのは「回答率の低さ」です。

回答が避けられる背景には、たとえ匿名のアンケートであっても心をさらけ出すのは嫌だという心理が見え隠れしています。

「弱さを認めること自体が弱い」という誤解。
これはアスリートや社会のエリート層のような優秀な人ほど強く持っている傾向があります。
この誤解こそが、自分自身を苦しめている原因となっているのでしょう。

予防的に自身に降りかかるストレスを対処、軽減することは必要ですが、メンタルのストレス不調はあるのが普通です。
メンタルの不調を否定するより、ストレスフルな状態に早期に気付き、対処法を考えた方が得策だと言えそうです。

乗り越えるカギは「認める」こと

現在、日本の人々が思い描いてきた「アスリート像」は、見直しの対象となってきています。

記憶に新しいのは、女子テニスの大坂なおみ氏の告白です。
2021年5月からの全仏オープンで、義務付けられていた記者会見の出席を拒みました。
やがてうつや不安に苦しんでいたと告白し、大会を1試合出場しただけで辞退することとなりました。
この時に、選手のメンタルヘルスについての議論は一般化されました。
アスリートとうつの問題を広く印象付けたのは、自分の苦しみを認め、告白することを決めたトップアスリートの勇気ある行動だったと言えるのではないでしょうか。

前述の元Jリーガー、森﨑兄弟も「弱い自分を受け止める」ことでうつを乗り越えました。

性格そのものは変えられないが、考え方は変えられるという「医師との対話」を軸とした治療法を取ったことで乗り越えられたのだそうです。

自分自身を否定せず、状態を隠さず、家族や周囲にいる人たちにさらけ出すことで、自分を受け入れてもらい、支えてもらったことが大きかったようです。

「『自分がそうなったときには、家族、恋人も苦しめてしまうかもしれない』と理解すると、『自分ごと化』がしやすいかもしれない」と、メンタルヘルスの専門家の間では言われています。
自分以外の人の問題を自分のことのように受け入れ、理解するということもまた、大切なことです。

弱さを受け入れることに加え、予防の具体策として「規則正しい生活習慣」も挙げられています。
睡眠のスキルを身につけて、緊張状態でも寝られるようになると、ストレスの数値が半分程度になります。
「うつ」ともっとも相関性が高いのは「不眠」であると、海外でも日本の精神医学会でも発表されています。

アスリートには確かに強い精神力は求められるでしょう。
しかし、その強さは、自分の弱さを受け入れることで初めて手に入ることなのかもしれません。

弱い自分を認め、休むときはしっかり休んで健康的な生活習慣を大切にする。

アスリートがメンタルヘルスを正常に保つためには、周囲の人々が「自分たちと変わらない、傷つきやすい隣人」であると認識し、偏見のない思いやりを持って接することも大切なことだと言えるのではないでしょうか。

編集後記

アスリートの皆さんは、毎日規則正しく生活し自分の身体や心の声をよく聞いているものだと思っていました。自分の弱さを受け止めるのは強くないとできないのは、矛盾しているようですが、現状の自分をありのままに受け止めることになるのではないかと思います。

参照元:屈強に見えるラグビー選手も…大坂なおみ問題提起の「メンタルヘルス」誤解と実情
なぜトップアスリートは「うつ」になりやすい?日本選手の4割がメンタルヘルス不調の衝撃
双子の元Jリーガーが語る「アスリートのうつ」「経験を伝えたい」と現役時代の闘病記を本に

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