サッカー大国ドイツのメディアで報じられたニュースをご存じでしょうか?
2021年3月、ドイツのプロサッカークラブの下部組織(アカデミー)コーチが、最低賃金を大きく下回る労働環境で雇用されている実態が報じられ話題になりました。
育成大国ドイツでも月給6万円以下!?
2021年4月現在、ドイツ・ブンデスリーガに所属しているクラブは1部、2部それぞれ18クラブ、3部20クラブの合計56クラブ。
大迫勇也や鎌田大地、遠藤航などの日本代表選手も所属するリーグです。
ブンデスリーガに所属する全チームが下部組織(アカデミー)を持ち、各年代ごとに編成されたチームに監督と1人、もしくは2人のアシスタントコーチが指導にあたっています。
しかし、アカデミーで指導者にあたっているおよそ25人から30人前後のコーチの中で、クラブとフルタイム契約を結び、生計を立てている指導者がひと握り程度しかいないことが報じられました。
ドイツではパートタイム契約の場合、1カ月にアルバイトで得られる給与の上限が450ユーロ(約6万円)までと規定されているため、ほとんどの指導者が上限の450ユーロ(約6万円)以下で働いていることになります。
給料よりも自身のキャリアを上げるために、不満があっても我慢している指導者が多いことや、プロサッカークラブのアカデミーコーチという肩書が自分の履歴書に書く上で、素晴らしい経歴になることから、表面化しなかったのではないかと番組内では指摘されていたといいます。
参照:「バイエルンでも月給6万円以下」。育成大国ドイツ“やりがい搾取”される指導者の証言
下積みが必要とされる業種に多い「やりがい搾取」
ドイツに比べると日本のJリーグクラブのアカデミーは、単年契約が主流ではありますが小学生年代担当の指導者であっても、基本的にフルタイムで雇用しているため、待遇面では勝っているようにも見えます。
しかし、2019年6月には水戸ホーリーホック(当時J2)でも、残業代が11年にわたり支払われていないという問題が発覚。
「厳しい経営を理解した上で働いてくれる社員もいたため、甘えてしまった」というクラブ側の弁明は、典型的な「やりがい搾取」であると批判されました。
では、街クラブと呼ばれる地域のクラブはどうでしょうか?
先日、ある街クラブのホームページで「アシスタント(ボランティア)スタッフ大募集」という文字を見かけました。
そこには、給与に関する待遇面の記載はなく、「この道で生きていくために勉強したいと思っている人」「雑用をいとわない人」「一日グランドで活動することを苦と思わない人」という内容が並んでいました。
昨年(2020年)から繰り返される緊急事態宣言や、外出自粛で様々な活動が長期的に制限される中、日本サッカーを支える地域のクラブの現状は更に深刻な状況かもしれません。
活動しなければ収入はなくなり、指導者たちの生計も成り立たなくなる状況へ発展するのではないかと心配されています。
しかし、それが「やりがい搾取」を正当化する理由になってもいいのでしょうか。
やりがい搾取を防ぐためには
日本でも、営業時間が長いサービス業や下積みが必要とされる業種に「やりがい搾取」は多いと言われており、若者を中心とした人材が集まる業界がその傾向に陥りやすいそうです。
やりがい搾取を防ぐために、雇用側へは「適切な労務管理を行うこと」などが求められますが、労働者側も「やりがいや夢を理由に労働条件の向上を放棄しないこと」が大切だと言います。
労働条件向上のためには、月謝だけに頼らない収入源が必要になります。
活動が出来ない状況下でも収入を得られる方法として、今では多くのチームがスポンサー制度やクラウドファンディングに取り組むようになりました。
中でもスポンサー制度は、継続してチームを支援するプランとスポット的に支援するプラン、大会を支援するプランなどの種類が用意されているため、支援する企業にとっても応援しやすい制度になっているようです。
実際に、いち早くスポンサー制度に着手し実績を上げているチームに、京都橘高校サッカー部があります。
京都橘高校は、スポンサーを募り部費無料化を目指したことで話題になりましたが、米澤監督は「目標として一番充実させたいのは指導者の雇用」だとも語っています。
参照:スポンサー募り部費無料化を目指す「選手を取り巻く環境を向上させたい」京都橘高校サッカー部の新たなる挑戦【米澤一成監督インタビュー】
このような制度を活用することで、指導者(コーチ)の労働条件向上を図ることも出来るようになるかもしれません。
編集後記
多種多様な価値観があり、働き方にもさまざまな考え方を持つ人がいる現代。
好きな職業や夢中になれる働き先に就きたい、就職活動をする若者の多くが思う気持ちに「やりがい搾取」という罠が潜んでいるとは驚きでした。
指導者が、指導に専念できる環境が整うことを願っています。
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